1.改憲情勢と日本社会のイデオロギー状況を抉りだす
 自民党は前文と9条を柱とする平和憲法の破壊を急いでいる。最低投票数の定めがなく金の力で大宣伝が可能な現行国民投票法によって大衆動員し、戦争法の整備を完遂させようとしている。本シリーズでは、地域で積み重ねた平和運動で見えた課題、沖縄と東京とで取材をしてきた『琉球新報』記者の視点、新自由主義のもとで「自己責任」論を浴びた若者の政治意識を学んで討論し、現在の改憲情勢とイデオロギー状況に抗う変革主体の形成をめざしたい。
①11月30日㈯ 日米同盟強化・石破改憲政権の本質を徹底的に暴く
 ――正念場の改憲反対闘争を闘い抜くために
 講師=高梨晃嘉(かながわアクション)
※この講座①は特別に開始時間が17時30分になります。
②12月18日㈬ 安保法制後の沖縄とヤマト/東京
 ――記者はどう見たか
 講師=明真南斗(『琉球新報』記者)
③3月1日㈯ 「Z世代」をとりまく閉塞状況と可能性をさぐる 
 ── 若者が闘いを取り戻すには
 講師=中西新太郎(横浜市立大学名誉教授)

2.職場と労働を映画から考える
──自分が労働者であることを見つめ直すために
 取り上げる2本の映画は、時と場所は違えど、ともに労働の現場にカメラを据えて労働者が置かれた状態をうつし撮る。『説得』は1974年、大阪・河内郵便局における全逓、全郵政(第二組合)の互角の現状況を打開しストライキに入るため奮闘する全逓東大阪支部の、ある分会の活動に焦点を当てた。全逓に入って一緒になってやろうと説く組合員たちは、「入っても変わりないで」「おれは1人でええねや」との職場の仲間の反応に、いかに答え得るか。
 『人間機械』は2010年代初頭、インド西部の某繊維工場内部へ分け入り労働の工程をつぶさにうつし出すとともに過酷な労働の実態を明らかにしていく。耳をつぶすほどの機械の轟音、汗と汚れでくたびれたシャツ、対照的にいよいよ際立つのは出来上がっていく布地の色鮮やかさ。映画の終わり近くで工場労働者は訴える。「この状況をどうにかしてくれないか」と。その声を、心の内を、わたしたちは自分の職場でも一度ならず耳にしたことがなかっただろうか。
 〝いかに答え得るか〟をともに考える講座にしたい。
①12月14日㈯
『説得――かわち1974春』
(企画・製作=全逓信労働組合、1974年)
 報告=土田宏樹(『伝送便』編集委員)
②3月22日㈯
『人間機械』
(監督=ラーフル‐ジャイン、2016年、インド)についての討論
 報告=田代ゆき(組版労働者)

3.パレスチナにおける絶滅戦争
 ――その経済的背景とイデオロギーを問う
 昨年10月7日以降に激化したイスラエル国家によるパレスチナ・ガザ地区に対するジェノサイド戦争は続いている。この背後にあるのは、西側諸国による政治的・経済的・イデオロギー的なイスラエル支援だ。
 ①の涌井秀行さんの講座では今回のジェノサイドという事態の背景にある要因を「資源略奪」という面から考えていく。そして、②の早尾貴紀さんの講座では、早尾さんの翻訳で近日刊行予定の「イラン人のサイード」とも呼ばれる思想家ハミッド‐ダバシの論集をもとに、西側諸国をシオニスト支援に動員し続けるイデオロギーを批判していく方向を検討する。
 本シリーズでは、パレスチナにおけるジェノサイドを終わらせるために何と闘い、何をなすべきなのか、参加者のみなさんとともに考えていきたい。
①11月23日㈯ 資源略奪戦争としてのイスラエル・ガザ戦争
 ――ジェノサイドの根底にあるガザ沖のガス・油田強奪の目論見
 講師=涌井秀行(明治学院大学国際学部付属研究所名誉所員)
②3月15日㈯ 思想問題としてのパレスチナ
 ――欧米で継続する植民地主義と人種主義を在米イラン人思想家ハミッド‐ダバシが抉りだす
 講師=早尾貴紀(東京経済大学教授・社会思想史)
③3月18日㈬ 政府・独占による労働運動根絶やし攻撃をはね返そう
 ── 関西生コン労働者への弾圧の意味するもの
 講師=萩尾健太(弁護士)

4.朝鮮は孤立していない!
 日本では、隣国の朝鮮民主主義人民共和国は世界的に孤立した国であるかのように連日報道されている。しかし、それは日本の「常識」であって、世界の常識ではない。このシリーズでは、反帝・自主を掲げ、これを阻もうとする「西側」帝国主義による孤立・瓦解策動と徹底的に闘い抜く朝鮮民主主義人民共和国の過去・現在・未来を、多角的に考究する。それは、日本のわれわれの過去・現在・未来を逆照射することになるはずだ。
 ここからわれわれが何を学び、いかに闘いの糧としていくか? このシリーズでは、その対話を、講師と受講生の垣根を越えて創り出してゆきたい。
①11月16日㈯ 朝鮮は孤立していない!
 わたしの中東・アフリカ訪問報告

 ──世界の反帝・自主勢力と連携する朝鮮民主主義人民共和国
 講師=李永徳(『朝鮮新報』記者)
②12月21日㈯ 朝鮮労働党第8回大会から4年、朝鮮民主主義人民共和国はいま
 ──次期党大会まであと1年、これまでの成果と今後の課題を考える
 講師=李柄輝(朝鮮大学校朝鮮問題研究センター教授)
③1月11日㈯ 米日支配階級の在日朝鮮人政策の本質
 ――「米占領期」の朝鮮人民族教育弾圧から朝鮮学校差別の意味を問い直す
 講師=金陽昇(朝鮮大学校教授教育学部長)

5.世界の短編小説を読む
 
(開始は18時30分)
 本年度前期では「語り」の種々相をとおして、とかく一次元的な時間と発想とに囚われがちなわれわれの日々をいかにして突き放すか、そして人の生を織り成す情熱や執着の多元性と多様性に改めて目を向けるべく、四編の作品を読んだのだった。
 後期はその第二部として、独創性豊富な作家たちのいっそう奇想天外かつ鋭い観察と批評性を湛えた想像力の饗宴に連なってみよう。
講師=立野正裕(明治大学元教員)
①11月27日㈬ ゴーゴリ作『外套』(岩波文庫)
②1月15日㈬ ポー作『鋸山奇談』(『ポオ小説全集3』創元推理文庫)
③2月12日㈬ エリアーデ作『ホーニヒベルガー博士の秘密』(福武文庫)
④3月19日㈬ マーク‐トウェイン作『ハドリーバーグの町を腐敗させた男』
 (『マーク・トウェイン短編集』新潮文庫)

6.芸術運動のアクチュアリティ
 昨年冬、シオニスト国家の爆撃で虐殺されたガザの詩人リファアト‐アラリールは、10年前に編著として刊行したガザの若手作家たちによる短編小説集『ガザからの手紙:パレスチナを物語る』(未邦訳)の序文で、次のように述べていた、――「書くという行為は、歴史や人類の経験を保存するものであると同時に、侵略者や植民地主義者に対する抵抗でもあるのだ。」
 アラリールのこの言葉にみなぎっているのは、芸術の創造や読解そのものを抵抗の場にしていこうとするパレスチナ人文学者の決意にほかならない。
 真の意味での「芸術の政治化」(ヴァルター‐ベンヤミン)はいかに果たしうるか。あるいは、20世紀の悲劇や喜劇を芸術家として受け止めた劇作家ベルトルト‐ブレヒトや画家パブロ‐ピカソ、詩人パウル‐ツェランなどの試みを、いかに現代において継承していくか。そこでは、芸術の作り手や読み手の「層」としての形成といった課題を問うていくことも不可欠になる。
 このシリーズでは、そうした芸術運動の形成にかかわる諸問題を、複数のテーマや角度から、参加者のみなさんとともに考えていきたい。
①1月25日㈯  武井昭夫―吉本隆明論争の今日的意味
 ──1960年代前半のイデオロギー闘争からとらえる現代日本の思想状況
 講師=山口直孝(二松学舎大学教員)
②2月1日㈯ パレスチナ関連における文学ジャーナリズムの作品を検討する
 ──岡真理「小説 その十月の朝に」、現代詩手帖特集「抵抗の声を聴く」ほか
 担当=伊藤龍哉/杉林佑樹(報告者は未定)
③2月8日㈯ 目取真俊の文学との出会い
 ──卒業論文のテーマをもとにして
 報告=成彩玲(朝鮮大学校外国語学部学生)
④3月29日㈯ 映画『風音』(監督=東陽一、脚本=目取真俊、2004年製作)についての討論
――舞台は沖縄。海に面した崖の上に頭蓋骨が置かれている。
  こめかみに穿たれた弾痕から「風音」が聴こえてくる。

7.この人にきく

 
①1月18日㈯ 三中全会後の中国経済の現状と対外戦略
 ――米中「新冷戦」のゆくえ 
 講師=朱建榮(東洋学園大学客員教授))
②2月19日㈬ 初の女性駐日キューバ大使にたずねる
 ――日本とキューバ、その二国間の関係について
 講師=ヒセラ‐ガルシア(駐日キューバ大使)
※この講座②は特別に開始時間が18時になります。