〈HOWS新ホール開設〉変革のための学びをともに!
イシカワ大使を迎え「ベネズエラ連帯の集い」開催


 十一月十八日、本郷文化フォーラムワーカーズスクール(HOWS)の新ホールにセイコウ‐イシカワ駐日ベネズエラ大使を迎え、「ベネズエラ連帯の集い」を開催した。
 HOWSは二〇〇〇年に開講した。その開講の辞は「新たな変革の世紀を創出するために――共に学び共に闘う〝労働者学校〟の創設」を謳い「力をあわせ二〇〇〇年を前進の足がかりの年にしよう」と呼びかけた。
 開会挨拶で広野省三HOWS事務局責任者は、二〇〇〇年開講以後のHOWSの経緯を簡単に紹介した後次のように述べた。
 「われわれは十月中旬にこの新ホールに移転した。このスペースを従来よりも多目的に活用できるようにこの一か月間整備をしてきた。ベネズエラ大使を迎え、本日〈こけら落とし〉企画として〝連帯の集い〟を開講できることはたいへん嬉しい。また、十二月二日には「朝鮮はいま――米日韓の戦争政策と「制裁」のなかで」(講師= 李昌興・在日本朝鮮人教職員同盟中央本部副委員長)企画を行なう。日本では一方的に〈朝鮮が悪だ〉との報道がされている。この厳しいなかで在日朝鮮人の人びとの思いや朝鮮民主主義人民共和国の実情を理解し伝えていきたい。ラテンアメリカでもキューバと米国の国交回復後、いまトランプ政権は一方的にその動きを覆し、ベネズエラへも攻撃を仕掛けている。事実を正しく伝え人びとの意識を変えていく活動を行なっていく」と。

メディアが覆い隠すベネズエラの実像

 今回の集いは、ドキュメンタリー映画『ベネズエラ、ラ・オスクラ・カーサ(隠された動機)』(監督エルナンド‐カルボ‐オスピナ、二〇一七年、日本語字幕、三八分)上映の後、セイコウ‐イシカワ大使の講演、質疑応答、その後懇親会と続いた。講演はスペイン語で行なわれ日本語に通訳された。駐日ベネズエラ大使館からはほかに、カレン‐ロメロ参事官と金谷祥子秘書(通訳)に参加いただいた。
 映画は、米国をはじめとする帝国主義諸国のベネズエラに対する侵略と干渉の歴史、そしてそれと連携して街頭破壊活動や経済戦争で生活必需品を不足させようとするベネズエラ国内の反政府勢力の実態や、ベネズエラの人びとの実情を具体的にわかりやすく映し出している。映画は駐日ベネズエラ大使館のホームページ(www.venezuela.or.jp)で視聴できる。
 イシカワ大使には一時間講演をいただいた。その最初に「新ホールの最初の企画を、世界的なベネズエラ連帯運動『われわれは皆ベネズエラ』の活動の一環として開催いただいたことに感謝します」と述べ、「今回のお招きが最後でないことを願います」と参加者の笑いをさそいながら講演を開始した。
 報告の冒頭で「ベネズエラに関する報道は極めて不適切で不十分である。いまベネズエラは国際的な攻撃にさらされている」と述べ、この攻撃は一九九九年のボリバル主義革命の開始と同時に始まり、クーデターや石油サボタージュ、もの不足攻撃などが行なわれ、米国や米州機構(OAS)、欧州連合(EU)などから介入主義的声明を繰り返し受けてきたと指摘した。
 「国際メディアはベネズエラを『無法で失敗した国家』として描写している。『人道危機』にあるとして干渉を正当化するためである」と述べ、最近の「ベネズエラの債務不履行」報道について「支払い時期が来ると『不履行』報道をする。ベネズエラは支払いをきちんと行なっているが『支払実施』について報道は一切ない」と指摘した。
 「なぜ米国はベネズエラを攻撃するのか。オバマ前大統領は『ベネズエラは米国の脅威』と宣言した。ベネズエラは大量破壊兵器も核兵器も所有していない。他国を侵略したこともない。憲法で平和と核軍縮実現を謳っている」と述べ、「米国が攻撃するのは世界最大の石油埋蔵量とベネズエラの地政学的位置にある。社会主義をめざす愛国勢力の政権を倒したいのだ」と指摘した。
 最近の国内情勢について「七月三十日の制憲議会選挙以後、和平へ向け着実に歩みを進めている。民衆の権力のもと問題を解決していく」と述べ、反政府勢力について「四月からの街頭破壊活動、七月制憲議会選挙不参加、十月州知事選参加、十二月市町村選挙不参加と迷走している」と述べた。
 最後に「国際マスメディアはベネズエラが孤立していると報道しているが、九月カラカス宣言に示されるように全世界にベネズエラ連帯の運動が広がっている。九月、国連人権委員会で六三か国がベネズエラ支持声明に署名し、ベネズエラはユネスコ理事国に最近選出された」と述べた。

大衆がマドゥーロ政権を支持する理由

 講演の後、質疑応答と懇親会と続いた。そのなかでベネズエラの人びとの闘いの状況が具体的に補足説明された。
 二〇一六年四月、資本家たちの経済サボタージュに抗し、政府は地域生産・供給委員会(CLAP)を設立し、食料品などを家庭に直接届け、地域の生産促進を開始した。CLAPについてイシカワ大使は次のように述べた。
 「資本家たちの生産や輸送妨害のなか、人びとの生活を守るため生活必需品をひとまとめにして週二回各地域組織を通じて直接各家庭に届けるようにした。六〇〇万世帯、全人口の七〇%がこの施策で恩恵を受けている。また、重要なのはこの施策で各地域組織が軸になり人びとの組織化、諸活動の活性化が進んでいることである。ベネズエラでは全人口の九〇%以上が都市部に居住している。都市農業省の指導のもと都市部で農業生産が増加している。CLAPは二〇〇三年の『石油サボタージュ』策動以後実施された困窮した人びとの救済施策〈ミシオネス〉の諸施策を発展させたものである」と。
 また、現在の与野党の状況については「反政府勢力の核となっているのは全人口の一五~二〇%、政府支持勢力(チャビスタ)の核となっているのは二〇~二五%と言われている。最近、どちらも支持しない人びとのなかで反政府勢力の行動に幻滅しチャビスタ側の意見が強まってきている。
 その要因は、野党は統一性がなく人びとの困難を解決するのではなく、ただ『政府打倒で団結』している実情が明白になったことにある。今年に入ってもまず街頭破壊活動を呼びかけ、その後一転し州知事選挙に参加し大敗し、そして十二月、市町村選挙には不参加を表明し迷走している。また、政府の社会福祉政策が大きな成果をあげていることがある。二〇一三年大統領選挙では野党のカプリレス候補は『現政権の社会福祉政策継続』を公約した」と述べた。
 参加者からは「米国がベネズエラに対して、米日が朝鮮に対して行なっているのと同じ攻撃を加えていることがよく理解できた」との発言があった。この発言を受けイシカワ大使は「カラカス宣言の署名者が指摘するように、ベネズエラの事態、そしてマスメディアの虚偽報道はベネズエラ人民のみへの攻撃ではない。この闘いは全世界の人びとに関わる課題である。人びとの意識を変えるチャンスである」と述べた。
 今回の「ベネズエラ連帯の集い」は、新ホールの開設を祝い、「共に学び共に闘う〝労働者学校〟」HOWSをさらに強化する決意表明の集いとなった。 【沖江和博】

(『思想運動』1012号 2017年12月1日号)